今回頂いた質問

母乳と人工乳、初乳と成乳の成分の違いについて教えてください。

近年、母乳栄養の価値が見直され、WHO/ユニセフの「母乳育児成功のための10か条」によって日本でも母乳育児が推奨されるようになってきました。特に免疫成分の高さが注目され、看護師国家試験でも母乳特有の成分について問われることが多くなっています。
それでは、ご質問について、それぞれ確認していきましょう。

母乳に含まれる主な成分

●脂肪●蛋白質●炭水化物●ミネラル
で組成され、
◆飽和脂肪酸◆多価不飽和脂肪酸◆オレイン酸◆リノール酸
などが含まれています。

人工乳と母乳

母乳は人工乳に比べ、感染防御作用がある免疫グロブリンやラクトフェリンなどを多く含んでいますが、反対にビタミンKはほとんど含まれていません。その点、粉ミルクなどの人工乳には、意識的にビタミンKが含まれているものが多くあります。
また、母乳栄養には母子相互作用を高める働きがあるとされ、カンガルーケアとともに母子の愛着形成に欠かせないとされています。

初乳と成乳

出産後数日の間分泌される乳汁のことを「初乳」と呼び、分娩後1か月後に分泌される乳汁のことを「成乳(成熟乳)」と呼びます。
初乳は黄色く粘稠性があり、成乳は白っぽくサラサラしています。含有成分の比較では、初乳は成乳に比べて免疫に関わる免疫グロブリンAなどの蛋白質を豊富に含み、反対に成乳は初乳に比べて新生児の成長を助ける脂質や糖質を多く含んでいます。

●抗体の種類と働き

免疫グロプリン働き
IgG胎盤通過性を有する
体内に侵入してきた微生物、異物と戦う
IgA分泌型であり、唾液や母乳などに含まれ、粘膜からの抗原侵入を防ぐ
IgM分子量が最も大きく、抗原による刺激後、最も早く出現して微生物や異物と戦う
IgD今のところ詳細は不明
IgEI型アレルギー、寄生虫の排除に関与する

では、国家試験で出題された母乳に関する問題を解いてみましょう。

問題

第103回 看護師国家試験 午前問題66

成乳と比較した初乳の特徴で正しいのはどれか。

1.ラクトアルブミンが少ない。
2.IgAの含有量が多い。
3.粘稠度が低い。
4.乳糖が多い。

1.× 成乳と比べ初乳にはラクトアルブミンなどの蛋白質が多く含まれている。
2.○ 成乳と比べ初乳には免疫に関わる蛋白質(特に免疫グロブリンA〈IgA〉)が多く含まれている。
3.× 初乳はコレステロールの濃度が高く、成乳に比べ黄色くて粘稠性がある。
4.× 成乳に脂質や糖質が多く含まれている。

答え…2

編集部より

母乳のビタミンK不足への対策はどうなっているのでしょうか。産婦人科、病院では一定期間K2シロップというビタミンK製剤を乳児に飲ませるのが一般的です。口から飲むことができない場合は注射で注入することもあるとか。また、母親が、ビタミンKの含有量が多い食べ物である、納豆、緑黄野菜を摂取するとビタミンKが母乳を通じて乳児に与えることができます。納豆消費量の少ない西日本地域のお母さんはビタミンKが不足しがちなので、特に注意が必要なんだそうですよ。