このコーナーでは、第107回国家試験に向けた医教オリジナルの国試対策を隔週で紹介していきます。全11科目を基本的に2回に分けて解説。パート1で過去問学習を基本にしたアプローチ、パート2『平成30年度新出題基準』を分析した新傾向に沿ったアプローチを行います。「むずかしい」と言われた106回国試ですが、ていねいに出題者の意図を探れば、決して手も足も出ない問題ではありません。過去と類似した問題からは「基本的なことはしっかり身につけてほしい」という意図が、新傾向の問題からは「分野のワクをまたがった、総合的な知識を身につけてほしい」という意図がみえます。つまり、看護の現場で力を発揮できる知識ですね。科目ごとに振り返り、皆さんも力をつけて107回国試に臨みましょう。

医教オススメの過去問学習のポイント

早押しクイズのように「これを問われたらこれ」と、正解選択肢を覚えてしまう学習では、昨今の「考えさせる国試」に対応できません。そこで、医教からの提案です。

過去問学習の際には、次の2つのポイントを意識してみてください。

(1)出題者の意図まで把握できる、分野をまたがった総合的な知識を身につける。
(2)選択肢の○はなぜ合っているのか、×はなぜ違っているのか理解する。

ポイント(1)の「分野をまたがった総合的な知識」があると、ポイント(2)の選択肢の○はなぜ合っているのか、×はなぜ違っているのかが理解できます。逆に(2)ができているようなら、総合的な知識が身についていると言えます。(1)と(2)は密接にリンクしているんですね。学習の際にも、実習や座学で身につけた(1)から(2)へのアプローチや、その逆の(2)から(1)へのフィードバックによって、生きた知識が身につきます。

誤肢の存在意義をないがしろにしない

誤肢はただ間違っている選択肢ではありません。思わず「うまい!」とうなってしまう奥深い誤肢が国試にはたくさん隠れており、近年それがさらに目立ってきました。誤肢の理解によってぐっと学習が進み、複合的なテーマの問題に出合った時にも慌てずにすみます。


今回は「精神看護学」パート1。第106回の国試問題と、それ以前の過去問を比較し、「精神看護学」の学習ポイントを探りましょう。繰り返し出題されているテーマも年代を追うごとに出題の形が変化しています。近年の傾向としては、テーマは同じでも質問内容が細部にまで及ぶようになってきました。その変化をしっかり読み取りましょう。はじめに106回の問題(☆)、次に過去の類似問題(★)をみてみます。

例1

☆第106回午前問題81:精神科病院の閉鎖病棟に入院中の患者宛てに厚みのある封筒が届いた。差出人は記載されていなかった。当日の看護師の対応で適切なのはどれか。
1.患者に渡さず破棄する。
2.患者による開封に立ち会う。
3.開封せず患者の家族に転送する。
4.看護師が開封して内容を確認してから患者に渡す。
5.退院まで開封せずにナースステーションで保管する。

解答
1.× 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」第36条の2に「精神科病院の管理者は、前項の規定にかかわらず、信書の発受の制限、都道府県その他の行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であって、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限については、これを行うことができない」とある。
2.○ 患者宛ての手紙を勝手に開封してはならないが、「厚みのある封筒」で差出人が不明というものをただ患者に渡すだけでは、治療を妨げる不測の事態に備えられない。そのため患者の開封に立ち会って、何かあればサポートできるようにする。
3.×
4.×
5.×
1と同じく患者の信書の発受の権利を侵害している。

正解…2

過去の類似問題

★第103回午後問題89:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律により、病院の管理者が精神科病院に入院中の者に対して制限できるのはどれか。2つ選べ。
1.手紙の発信
2.弁護士との面会
3.任意入院患者の開放処遇
4.信書の中の異物の受け渡し
5.人権擁護に関する行政機関の職員との電話

解答
1.× 
2.× 
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」第36条の2において、制限が禁じられている。

3.○ 「精神保健福祉法の運用マニュアル」の「任意入院者の開放処遇について」において、制限の対象となる任意入院者は「(1)他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に悪く影響する場合 (2)自殺企図又は自傷行為のおそれがある場合 (3)(1)又は(2)のほか、当該任意入院者の病状からみて、開放処遇を継続することが困難な場合」とされている。
4.○ 「精神保健福祉法の運用マニュアル」の「通信・面会の制限について(信書について)」において、「刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書については、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上、患者に当該受信信書を渡した場合においては、当該措置を採った医師は、その理由・症状を署名のうえ診療録に必ず記載する」とある。

5.× 「精神保健福祉法の運用マニュアル」の「通信・面会の制限について(基本的な考え方」において、「(電話及び面会に関する制限は)病状の悪化を招き、あるいは治療効果を妨げる等、医療又は保護の上で合理的な理由がある場合であって、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり、個々の患者の医療又は保護の上での必要性を慎重に判断して決定すべきものである」とある。

正解…3・4
★第102回午後問題52:精神科病院に入院中の患者の法的処遇について正しいのはどれか。
1.患者は退院を請求できる。
2.看護師は面会を制限できる
3.保護者は外出の可否を判断できる。
4.精神保健指定医は手紙の発信を制限できる。

解答
1.○ 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」同第38条の4において「精神科病院に入院中の者又はその家族等は、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる」とある。
2.× 106回国試【例1】解説文参照。
3.× 本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇を「開放処遇」というが、その判断は医師が行う(平成26年4月1日より「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」における保護者制度は廃止された)。
4.× 106回国試【例1】解説文参照。

正解…1

106回国試〔例1〕の特徴

精神科病棟における行動制限については繰り返し過去問で問われてきました。第102回午後問題52、第103回午後問題89ともに法律上の制限の全体について問われてきましたが、第106回午前問題81においては、「差出人不明の手紙が届いた」という設定で、信書に関する事項に絞って具体的な対応を各選択肢で問いています。法律の知識とともに、臨床での対応の基礎力を問う問題になっており、近年の傾向を示した問題といえますね。

それではもう1問。例2を挙げてみましょう。

例2

☆第106回午後問題88:精神医療におけるピアサポーターの活動について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.訪問活動は禁止されている。
2.活動には専門家の同行が条件となる。
3.ピアサポーター自身の回復が促進される。
4.精神保健医療福祉サービスの利用を終了していることが条件となる。
5.自分の精神障害の経験を活かして同様の体験をしている人を支援する。

解答
1.× ピアサポート活動のひとつとして「生活支援、食事等」のサポートがあるため、訪問活動も積極的に行われる。
2.× ピアサポート自体が、専門家からの指導や助言よりも、共通する経験を持つ者同士が共感を通じてサポートしあうことにあるので、専門家の同行は必須ではない。

3.○ 「ピア」とは仲間を意味し、「サポート」は支援を意味するが、専門家によるサポートとは違い、仲間としてよりよくサポートする「仲間力」に基づき、「人は実際に人を支援する中で成長する」という考え方に基づいており(日本ピア・サポート学会)、回復も期待できる。
4.× 精神保健医療福祉サービスを利用している同じ仲間でサポートしあうこともあるので、サービス終了が条件ではない。
5.○ 正しい。ピアサポーターの役割を表している。

正解…3・5

過去の類似問題

★第102回午前問題32:同じ問題や悩みを抱えた人々が助け合う活動はどれか。
1.ケースワーク
2.ピアサポート
3.コミュニティワーク
4.コンサルテーション

解答
1.×
2.○
3.×
4.×

ピア(peer)には仲間、同輩という意味があり、ある問題の当事者が自分と同じ立場にある人や同じ問題をかかえる人を仲間の立場で支えることが、ピアサポートである。

正解…2

過去の類似問題

★第103回(追試)午前問題68:断酒会について正しいのはどれか。
1.講義が中心である。
2.看護師がリーダーを務める。
3.共通の悩みを持つメンバーで構成される。
4.飲酒した時は退会することが決まっている。

解答
1.× 断酒会は、アルコール依存症の当事者同士が同じ立場で支え合ういわゆる「ピアサポート」を目指すため、講義は中心とはならない。
2.× セルフヘルプグループであるので、リーダーもメンバーの中から選ぶ。

3.○ アルコール依存症など同じ悩みで苦しむメンバーで構成される。
4.× 飲酒のコントロールができないこと自体も体験談として話し、メンバーで共有して治療していく。飲酒したからといって退会させられることはない。

正解…3

106回国試〔例2〕の特徴

もとは、アルコール依存症の患者などに勧める治療法として、セルフヘルプグループ、自助団体などへの参加を問う問題が国試には多かったです。最近は、問題を抱える人同士が支えあうことによって治療に効果が現れることに注目し、「ピアサポーター」という名称が認知され、トレーニングをつんだ人がきちんと役割を担うようになりましたね。そのような世の中の変化がしっかりと根付いた問題。解くことによってピアサポーターの理念と活動内容が自然と理解できるようになっています。

107回国試に向けた「精神看護学」学習ポイント

精神保健医療福祉に関する法律をきちんと押さえたうえでの、臨床の細やかな対応が問われます。根拠に基づいた看護実践が最も重要なテーマといえるでしょう。法律、制度、定義をしっかりと押さえた上で、実習で出会う患者さんの疾患に対して、法律、社会制度の観点から考察してみるのも効果的です。

次回「精神看護学」パート2では、新出題基準に照らした「精神看護学」新傾向の問題をみてみましょう。