<part2>「自分のことを理解して!」なんてただのわがまま

連携するにあたって難しい点はありますか。

国家資格をもった専門職が、それぞれの専門性を発揮していくことがとても大切になりますが、実際のところ、お互いを理解していないことが少なくありません。自分の考える患者さんに対する関わり方や治療をしたいのであれば、その方法が本当に適切であることを他職種に理解してもらう必要があります。看護師や理学療法士が患者さんにそれぞれ違うことをやりたいように提供していては、患者さんは混乱して困ってしまいます。

専門職同士がお互いを理解するために必要なことは何だと思われますか。

まずは相手を知ることです。一方的に「自分のことを理解して!」なんて言っていてもそれはただのわがままです。自分のことを他職種に理解してもらいたければ、まずはその相手がどんな仕事をしていてどんなスケジュールで動いているのかまで可能な限り知ることです。そして、相手がしてほしいと思っていることをしてあげることが信頼関係を生むと思っています。これは医療における連携だけではなく通常の人間関係でも同じですね。

相手の気持ちになって考えることが信頼関係につながっていくというのはおっしゃるとおりだと思います。
それでは、看護師さんにはどのようなことを求めますか。

通常の業務で忙しいと思いますが、理学療法士とディカッションをする時間を少しでもとってもらえると助かります。また、リハビリについて困ったことがあれば簡単なことでもいいので相談をしてもらえるといいかと思います。

どんな相談をしたらよいのでしょうか。

相談の内容は、ポジショニング、他動的な関節可動域訓練の仕方、筋トレ方法、排痰や呼吸介助の手技など、些細なことでもかまいません。特にポジショニングは褥瘡予防が大切な視点ですが、理学療法士は褥瘡以外にも、呼吸や姿勢保持・嚥下など様々な視点から総合的に検討をしています。看護師さんの視点と理学療法士の視点を持ち寄ってディカッションをして、その患者さんに最適なポジショニングを実施することが必要だと思います。

看護師さんと一緒によい結果を生んだ例を教えてください。

ICU入室が1か月以上と長期化していた敗血症の患者さんで、全身状態が不安定で離床が進まずにいた方がいました。患者さん本人もこの状態にかなり疲弊している状態で、精神的にも完全に行き詰まっていました。このときに、医師・看護師・理学療法士でディスカッションを繰り返し行って対応策を考えたんです。

医師・看護師・理学療法士のチームで検討したのですね。

はい。その結果、呼吸・循環動態の変動リスクはあるものの、精神面へのアプローチを優先することにして、医師からリクライニング車椅子を使った離床の許可を得ました。看護師と理学療法士が協力して離床を開始したことがきっかけにもなって、その後、患者さんは快方に向かい、最終的には歩行して自宅退院することができました。

それぞれの専門性が生かされた事例ですね。

互いの専門性を発揮したアプローチを
(写真はイメージです)