今後、ますます重要視されてくるチーム医療。
コメディカルの分野で働くプロに、看護師とどのように関わって仕事をしているかを伺いました。

東京都内の八千代助産院で働くTさんにお話を伺いました。Tさんは、新卒で医療機関に勤務した後、新生児訪問活動などの地域支援を行う助産院に転職をしました。地域で、チームで、という視点を大切に日々お仕事をされています。

【助産師】
1)お産を助ける専門職。看護師と同じく国家資格で、正常な経過にある人については、産科医と同様に妊娠中の診断やお産の介助ができる。
2)妊娠、出産の時期だけに限らず、出産準備や子育て支援など女性の一生を通じた健康相談に関わる。
3)助産師の約9割は総合病院や産婦人科小児科病院などの医療機関に勤務している。助産所勤務の助産師は約6%、区市町村役場などに勤務する助産師は約3%。(東京都助産師会HPより)

【Tさんプロフィール】
北海道出身。大学在学中に看護師、助産師、保健師の3つの資格を取得。新卒で助産師として都内の病院に就職。6年間、産科・新生児科に勤務した後に、助産院に転職して現在に至る。


<part1>お母さんが安定しているのがいちばん。

学生時代に3つの資格を取られたということで、勉強はハードだったのではないですか。

そうですね。みんなが夏休みの期間に助産師の実習があって、ハードでしたが気力で乗り越えました。辛かったけれど仲間が支えになってくれたので楽しかったです。

それらの資格のなかで、助産師を仕事に選んだ理由はどんなところにあるんでしょうか。

将来的に在宅看護や訪問看護の方向に進みたいという希望があり、看護師と保健師の資格も取ったんですが、いちばんは赤ちゃんが好きなんですね。出産に立ち会えるって奇跡的なことだと思うんです。命に直結することなので、自分ができるのかなという不安は大きかったんですが、実習を通して思いが強くなったので助産師を選びました。

では、現在のTさんの具体的なお仕事内容について教えてください。

助産師として、出産介助や、妊婦さんへの指導、産後ケアのショートステイ、新生児のケアなどをしています。褥婦さんは、育児の基本を覚えてもらってからご自宅に戻るんですが、頼る人が近くにいないと独りきりだと思ってしまい、うつになる方もいるんですね。そういった方のために区の委託で新生児訪問活動も行っています。

どんな体制で働いていらっしゃるのですか。

助産院は医師がいないんですね。そのため、助産師が判断しながらケアをします。スタッフの数は10人。助産院としては多いと思います。他にも、セラピストが妊婦さんにアロママッサージをしたり、整体師さんが教室を開いて骨盤のケアをしたりしています。
勤務スケジュールは、2交代制です。お産がある時は緊急の呼び出しもありますが、基本的には、日勤が8時45分から17時15分まで、夜勤が17時から翌朝9時まで。申し送りでは、それぞれの方に必要なケアの情報共有を行います。

お産はひと月にどのくらいあるのですか。どんな準備をされますか。

助産院なので病院に比べると多くはないです。月に数件くらいですね。助産院には分娩台がないので、妊婦さんから連絡がきたら、お産の部屋を作ることから始めます。畳の部屋を暖めて、布団に防水シーツをつけて、体重計やへその緒を切る器具を準備します。

Tさんの助産師としてのやりがいを教えてください。

産後、数日過ぎてから、お母さんがいろいろなことができるようになっていくのを見るのは嬉しいですね。それから、後日ご自宅を訪問したときに、お母さんの表情が落ち着いているのを見るのは喜びにつながります。精神的なトラブルがあると母乳の出にも関わってくるので。

逆に大変なことはどんなことでしょう。

育児不安があったり、経済的に厳しい方やご家族の協力が得られない場合だと、どうやって地域に繋げて子育てをサポートしていくかということが問題になります。区の担当保健師さんに相談したりしますが、先行きが見えないと大丈夫かなと心配になりますね。

お話を聞いていると、ご家族が地域で不安なく生活していくためにどうするか、という視点を大切にされているように感じます。保健師の資格を取られていることとも関係しているんでしょうか。

病院から今の助産院に転職して、地域での看護活動に近づいたのも影響していますね。新生児訪問をやらせていただいているので、お母さんたちの助けがほしいという不安をうまくキャッチして、そのお母さんたちが明るい気持ちで育児ができるようになればと思います。

お母さんも話し相手がいるだけで違うんでしょうね。

そうですね。赤ちゃんはまだ言葉はしゃべらないですからね。お母さんのお悩みを聞いたり、お話し相手になったりすることも大切なことですね。

地域で、チームで、という視点
(写真はイメージです)